(1)
（表紙）
「京都 見聞雑記」
(2)
（見返・遊紙）
(3)
（扉）
「京都 見聞雑記」
(4)
文久三亥六月三日京着以来
見聞録
一七月四日夜、三条大橋ヨリ四丁程下ノ河原ニ切捨有之由ニ付、早速罷越見物、
歳齢廿五六才位ノ男壱人、白紺壱羽位ノ棒嶋帷子ニ紺木綿小袴を着し、五分月代、
素足、右ノ耳ヲ切ミケンニ壱ヶ所四五寸位、左ノ肩ゟ右ノ脇へ懸後キス、左ノ手ノ甲
ソギ疵、ノドニ突キズ壱ツ有之、脇差長尺不足木綿ニて包ミ、傍ニ刀ノサヤ斗并下
駄有之、股ノ上ニ札有之
右之者義、正義之名をたはかり、冨家江申入金銀財宝をむさほり、
其罪不軽候、依之加天誅者也
又半丁程上ニ戦争ノ跡アリ、刀ノ身捨有之
(5)
一七月十七日、東園右中将殿紀州加田浦へ監察使として御出立、警固
御先へ藝州十人二行、津五人、中将殿直垂カザ折馬上、侍八人程、
鑓、刀、長刀、長柄傘、台笠、惣御警衛之鑓具足惣供紀州三十人、
隊長馬ニて、又者鑓弐本有之、何れも小袴・塗笠
一同日、四条侍従殿播州姫路へ直使同刻御出立、御警固黒田弐十人、津
十人御附添之由、此方ハ不見、御両使共御台場御見分と申沙汰有之候
一七月十九日、阿部主計頭様御固場御見置として御上京有之
一七月廿日、東建春門内
壱番 昼 肥後弐十人 夜 宇和島十人
姫路十人
弐番 昼 松代十人 夜 肥後弐十人
桑名十人
三番 昼 津弐十人 夜 津山十人
忍十人
別紙
一辰刻より申刻昼夜交代之事 一当分衣躰羽織袴之事
一鑓随従之事但休所ニ差置候事 一弐十人之内三分一ツヽ不寝之番可相勤候事
一毎夜三度ツヽ見廻り之事 一持場之義者追而御達之事
一交代之節、於御門番所ニ御守衛何藩何十人と申答通行之事
一交代之節、十人ニ従僕三人ツヽ番所ニ残置候事、其餘供帰之事
一弁当・夜具之類、於其藩世話可有之事
一弁当・夜具抔持運之節者、持部江鑑札御渡しニ相成候間、於御門番所ニ
可被改候事 但し、十万石ニ付三枚ツヽ御渡之事
(6)
一非常出火之節、 承明門両脇江、御書付之通り東西ニ分無
遅滞参集候事 但、出張之節直ニ建春門より参集致し、御指揮可相待候事
一東 賀茂川、西 堀川、南 二條、北 鞍馬口
右之外出張ニ不及候事 但し、雖為遠火、火勢ニより出張可有之事
一非常之節一統家事装束之事
一非常之節者隊長九門内馬上被 免候事
但、建春門外北之方築地際ニ高張乗馬扣居、鑓持壱人ツヽ随従之事
隊長之従僕・鑓持共ニ御門内両人随従之事
右之通三條殿ゟ祢津利左衛門御呼出ニ而被 仰付、来廿三日ゟ当番
相勤候様口達有之
非常之節席順
承明門東廻廊江
作州 津 宇和島 肥後 松代 桑名 姫路 忍
右之通心得居候様、三条殿ゟ御達有之
七月廿二日
一諸藩持場左之通
西准后御門内
壱番 昼 白川十人 夜 秋田弐十人
庄内十人
弐番 昼 阿州十人 夜 中津十人
高松十人 福山十人
(8)
三番 昼 大垣十人 夜 備前弐拾人
淀 十人
東御台所御門内
壱番 昼 雲州拾五人 夜 築州弐拾人
弐番 昼 郡山十五人 夜 米沢十五人
三番 昼 松山十五人 夜 築州弐十人
一七月廿四日、朝三条大橋際御制札江首壱ツつるし、捨札有之
順三郎 彦太郎 市二郎 庄兵衛
当夜不居合追〻加天誅者也
三条通東洞院西入 丁子や順三郎
室町姉小路上ル 布屋彦三郎
同丁 同 市二郎
仏光寺高倉西入 八幡や夘兵衛
葭屋町一条下ル 大和屋庄兵衛
右之者義、近来幕府私ニ交易相許候以来、一己之利潤を貪り取、
銅銭蝋油絹糸塩等を始其外有用之諸品買〆、横浜・長崎江続（贖の誤カ）下致、
夷賊ニ相渡候ニ付○諸物価著騰、万民之困苦不構、甚敷ニ至て流離
終ニ乞食ニ及候者、実ニ不便之至り、於人心不忍事候、畢竟幕府之
悪政之いたし候所とハ乍申、我 大御国之民と生来りて
御国恩万分一を奉報心無之而已ならす、恐多も上之御趣意相
背、禽獣ニ劣幕府ニ就夷賊を率ひ我国を残害いたし候処、言語
(9)
同断不届至極、天下億兆に代て加誅戮令梟者也
右之者共大坂・長崎・宇治・岐阜・飯田・長濱・西国・東国之奸
商共一〻取調、三旅〈此間／落字か〉夷賊と向後交易仕者根を絶し候、
右之者共ゟ金銀借用致候者、一切返済ニ不及、自然町奉行所ヨリ
取立かましき義候ハヽ、一〻〈奸ノ字落字か〉賊共之姓名を記、三条四条橋ノ上以
張紙願出可申者也
右之通相認有之候、追〻聞候得者、胴者仏光寺門前ニ有之候由、又先頃
三条之御制札之内、私ニ夷国交易御停止并米夷国江遣候義、偽金之
御制禁之三枚をはづし、三条河原へ捨置候処、町奉行ニて為懸候故、
私ニ交易御停止と申札江結附置候
一同廿五日〈暮四ツ過〉ニも、北野天神之下ニ〈是ハ大丸手代之由〉壱人切捨置候由、捨札等不承候 外ニ男壱人・女壱人切捨有之由
一廿六日朝、三条大橋御制札ニ首壱ツ有之、捨札
大藤幽叟
此者奸吏板倉周防・水野和泉等江与シ、其許状を受砲台築造を
名トシ、富○家〈商〉江立入大金を貪り、罪不軽、依之加天誅者也、亥七月
此大藤と申者備中キビラ神主ニて、国学を致し、室町竹屋丁下ル山田
源兵衛方ニ止宿致居候者之由
一同日、同所南之方本納寺、其外所〻へ張札左之通
歎願
願主下人中
病気老衰 布屋市次郎
并 彦太郎
両人
(10)
是迠於横浜表呉服・糸等交易仕居候段、深奉恐入候、全之義者心得
違仕居候而、其他御運上所御令辞被為在御座候事而已を存知、
天恩・御国恩之義も不相弁候段、誠ニ慙愧至極無申訳候、此度
天誅之御張紙ニ恐入、後悔及血涙改心仕、右ニ就而者是迄交易之心
組ニ持溜居候呉服・糸類等、其餘諸品・家財・金銀ニ至迄不残没入被
為 仰付候ハヽ、万〻分之罪滅ニ相当り可申候哉と、深難有仕合奉存候、右之
次第ニ被 仰付候上者、両人之主人御助命被下候様、御憐愍を以
御聞済被為在被下置候ハヽ、重〻難有仕合ニ奉存候、誠恐謹言
七月
上
此書付者歎願之儀ニ御座候故、何卒為御張置被下候様奉願上候
一七月廿六日、夜八ツ時過頃高台寺失火、諸家御守衛方日之御門内へ詰、
此方者御定外ニ付不罷出之
四条橋際ニ捨札有之
高台寺奸僧共、朝敵松平春嶽寄宿を差許候段不届至極ニ付、
放神火焼捨畢、向後右様之者於有之者、可処同罪者也
亥七月廿六日夜九ツ半時
一明後廿八日巳刻、馬揃 御覧ニ付、為御守衛非番之輩可被致出致（仕の誤カ）事
衣服 隊長直垂
其餘 羽織小袴
陣笠・鑓随身
刻限無遅〻参集、依 御差図 御覧所北南ニ分列候事
(11)
自然病気之者有之候ハヽ不及出勤、闕之侭出張之事
弁当於其藩用意之事、雨天之節ハ順延、廿九日之事
隊長直垂、明廿七日午刻後ゟ夕景迄ニ可申出候事
右通三条殿ゟ被仰渡候
七月廿六日
一右直垂廿八日朝隊長へ被下置候、尤御守衛人数不残へ被下へく之処、
御間ニ合兼候間、追〻被下候由
一廿八日、雨天ニ付御延引、猶又晦日ニ被 仰出候
一飛鳥井家雑掌ゟ、御家来佐久間修理御用之義も御座候付、
御所ゟ被召候ハヽ可罷出哉、御承知被成度申来候廿六日事
一七月廿九日朝、室町通姉小路上ル木戸江懸置候板札之文言
申渡 布屋彦太郎下人
其方共歎願之趣ニてハ、彦太郎父子弥改心いたし 御国恩を
奉報度旨、左も可有事候、乍去大罪を犯し候者率爾に可赦
筋無之候へとも、尚考之上可及沙汰候、其旨存
尚又申渡
其方共宅江浪人体之者罷越、猥ニ金銭之無心等申込ム共、決而
正儀之者ニ無之候間、一切頓着不致早〻最寄之方へ可訴出候、即
刻人数さし遣召取へきもの也
亥七月廿九日
(12)
一七月○廿三日、中国辺台風ニ而諸〻大荒、因州抔も早稲ハ穂出候処
一穂も用達候分無之程之大荒と申事、当三日因州泊之者
京着之上咄之由、備後屋八兵衛申聞
一異国船薩州沖ニ拾壱艘、先達而長州戦争之頃ゟ相見候付、
薩州ニ而ハ夫〻海岸御備之用意有之、湊口水中江鎖抔を繋キ
懸ケ、台場〻〻江ハ長筒与唱ひ候大銃弐百五拾挺備付ニ相成、右筒
壱挺ニ付焔硝壱斗六升ツヽ一度ニ詰候と申事之由、右様堅固ニ
相備、万一先方ゟ手を降シ候ハヽ打放可申与相待居候処、当月三日
大風ニ而、大洋も大荒ニ付、右繋居候拾壱艘之異船、薩刕
之地方江近寄候処、前条長筒弐百五拾挺一同打放、右煙ニ而海中
黒白も不見分之処、薩州方軍艦ニ打乗異船ニ近寄散〻ニ
打散し、拾壱艘之内四艘者迯去、弐艘ハ微塵ニ破、五艘ハ薩
州へ奪ひ取り、并船将三人生捕ニ相成、大勝利を得候由、是ハ
異船之方者薩州江打掛候心得ニ者無之、大風を避んか為メ
地方江近寄候処、不思寄不意を被打候故、如斯打負散〻ニ
相成候事之由、右之趣等早打以薩州ゟ在京之御役人迄
申越候由、錦小路通り東洞院東入薩州屋敷住居御役人ゟ
承候旨、備後屋八兵衛申聞 七月廿六日夜聞書
一一橋中納言殿御事近〻御上京被成候付而者、御旅館之義、此度者二條
御城御借渡相成候間、差支無之様可被取斗候、尤御城内
(13)
御建物并ニ畳等先達而 御在城中之通可取斗旨、御老中
方ゟ被仰下候付、此段相達候、以上
七月廿六日
尚以御殿向之義 御在城中之通ニ相心得、御門番其外外固
等之儀も平常之通可相心得旨、是又被仰下候ニ付、此段も
相達候、以上
一七月晦日、終日雲り雨少〻宛降、会津藩馬揃
御覧之処、雨故追〻後レ、夕七ツ三四分頃漸始り、○不○残甲冑ニて調練、
不残桃灯ニ而、旗馬印之脇ニ者不残高張、御篝拾ヶ所程ニ而焚申候、此日
当番ニて鈴（伶）人楽舎ニ罷在、拝見不致残念、夜彼是四ツ頃迄懸候様子之由
一八月朔日朝、室町通姉小路上ル布屋彦太郎軒ニ懸置候板札
申渡 布屋彦太郎下人共江
一昨夜格別之勘弁を以考中沙汰相待候様申渡候処、別ニ何者之所為ニ候哉、
同夜張紙を以交易品焼捨候様申付、其方共当惑ニ及ひ、右張紙二種共町
奉行所へ持出裁判を乞候処、幕吏何之処置も無之ニ付、無拠其方共明日
焼候趣慥ニ聞込、以之外之次第ニ候、一躰交易之洋品焼捨候共 御国恩を奉
報と申ものニも無之候間、指当町内江預置、追而及沙汰候迄屹度可相待候
亥七月卅日
一蛸薬師通高倉西江入町医師赤澤多冲咄
七月廿七日夜西大谷江投文、東西六条并西六条惣会所朝敵越前江懸合ニ付、追々
(14)
焼打致候由認置候ニ付、西六条へ為見舞右多冲参候処、家財取片付致居候由、又近辺
市町も同様、又惣会所へハ越前家老止宿致居候、是ハ高台寺を借置候所、着前夜
焼払候ニ付、惣会所へ着致候一躰ハ西本願寺へ春嶽様、惣会所へ当越前様、高台寺へ
御家老止宿之調之由、然処浪士之張紙ニて市中不穏候間、一先二条之越前様御
屋敷へ引取可申旨申触候処、又二条御屋敷近辺も取片付候様子故、又主人へ伺之
上引越被申事ニて、会所之方ニ止宿、 春嶽様・越前守様御両公共七月廿九日か晦日ニ
御在所御出立と申事之由
一寺町通綾小路下ル長寺ト云寺平戸之旅宿、是へも焼打ノ札を懸候由、平戸も春嶽方
ト云風聞、又加州旅宿建仁寺江も同様、加州者何故か不弁候
大丸之店ヘハ支配人之首を渡候か、大丸之名を替他所へ引越候欤、又ハ焼打ニ致可
申哉と之張紙ニて、是も取片付候様子、是ハ当春浪士六人ニて大丸へ参り三百両借
用致旨申込、無余岐（儀）貸渡印書取候由、名前仏生寺弥八・五位又兵衛外四人、右之
跡を附候処長州之屋敷へ入候ニ付、町奉行并会津侯へ願出、両所ゟ長州へ問合候処、
右名前之者有之由ニ而、早速大丸之方へ三百両御下金有之、右六人者浪士之内ニて
強勇之者ニて、長州ゟ御扶持被下候者之由、長州ニて入牢、追々御免ニ相成候処、浪士仲間
ニて不免、追々六人共梟而、夫故之義と申風聞御座候
一五月末之頃欤、唐橋村庄屋之首を土佐之屋敷表門江つるし置候、是ハ千種殿
を隠し置を覚候故之義と申事、千草ハ、先頃九条・久我・岩倉・千種・富小路五人一同
洛中払ニ相成候節、唐橋御地所ニ被居候由、又千種之雑掌之首を一橋侯御在京中
御旅宿本納寺へ梟、右ノ手を千種、左ノ手を中山殿へ捨置、又大坂儒者池内大学ノ
(15)
首を中山殿、手を正親町殿、足を平戸屋敷へ捨置候由、平戸抔之張札ハ右様子ニて凡
察し物と申事、又宇和島之取沙汰不宜由、如何之沙汰哉不承候、又室町通下立売下
大村泰助ト云蘭医、此節風聞買し聞者之事
右赤澤多冲咄承候ニ付認置、乍去実否不相弁候
一八月三日朝、七条通遊行寺前ニ首壱ツ梟有之候由之処、今日当番ニ而不参見候間、捨札等
一向不相分候、何れ町人之首之由申、胴者伏見ニ有之と申事〈追々承候得ハ、但馬国ノ銀座御代官ノ／手代ニ而、大利を貪候者之由〉
一大阪出火、今三暁寅刻頃ゟ、東堀川筋ゟ久宝寺橋東詰壱筋南筋南へ入濱
西側ゟ出火いたし、北江半町斗、西風つよく、東側江火移り追々東江焼込、松屋町
骨屋町御祓筋まて、南安堂寺橋北江入所迄焼申候、辰之刻之未タ火鎮り
不申候、右〈四日朝〉大阪飛脚宿萬や長左衛門店江張出置、三日巳之刻火鎮り候由、猶又
張出し有之候
一八月五日朝ケアゲ〈粟田口ヲリクチ／御仕置場ノ辺〉ニ梟首有之、是ハ大津宿本陣ノ由、同宿高札場へ捨札
懸置候由、写しを見候へ共落字多く弁兼候、其大意ハ、朝敵春嶽ニ止宿を許し
候故之事之様子、又春嶽者京都江一足も不為入候間、宿を致候者ハ、宿之穿鑿之上
右同様加天誅候由認有之候
一八月五日、馬揃御覧有之候ニ付、先日之通相心得非番之者御守衛相勤候、昨夕被
仰渡ニ付、朝五ツ半時頃出宅、隊長直垂馬上、伍長小袴ニて、先乗兵士小袴・陣笠
ニて寺町通り、寺町御門ゟ三条殿へ参候処、橋本中将殿方へ参り休息致候様ニと事ニて、
日御門前橋本殿へ参り、玄関ゟ下ケ刀ニて玄関南之間ニ肥後と同間、尤屏風仕切、
茶・煙草盆出ル、諸藩揃候上中将殿御逢被成候由ニ而、隊長不残上段之間へ罷出、
(16)
御差図有之図面拝見致し、銘々写し候、尤橋本殿方ハ 御覧所南へ出役之分斗、
北之方ハ姉小路殿へ休息、凡図面
（図）
四ツ時過三条殿ゟ御場所江詰候様御達ニ付、一同三条殿門内ニて中貫をハキ、鎗を下ケ陣笠を
持、一藩ツヽ一行ニ立、 御覧所前ニて中座致し立場へ詰ル、橋本殿・滋野井殿御出張ニて御差図
有之、其節米沢・阿州・備前三侯之御人数相詰居、因州侯行列押太鼓ニて北ノ方ゟ押出シ、固場
ニ而備を立座備となし、会津人数繰出候頃端ノ方へ備を畳ム、因州・阿州・上杉・備前之四侯御供無シ
ニて堂上方御見物所前ニ御立並、鞭・陣笠御自身ニ御持被成、天（伝）奏方其外公卿衆へ御直談等
有之、追々会津候御先操（繰）出、何れも甲冑美事也、足軽不残壱幅長四尺程ノ白シナヘニ姓名ヲ
書シ帯ス、士分ハ少シ形ヲ大キクス、有士四十七騎御召、御引馬共四十九疋、旗数等指ヒ兼候、惣人数大凡
弐千余も可有之哉、人数を三ツニ分ケ寄正応ノ形チを為といへとも、御場所幅狭く〈凡六十間余〉三隊とも
重り候、鉄砲、弓士、長柄ハ徒士ニて取槍ニ致候様ニ見へ申候、 御覧所前ゟ鉄砲を操懸りニ打〈序調子／ニて進ム〉
日ノ御門前ゟ一列と成、彼ノ皷ニて進、惣発一声、惣軍声を発ス、後軍勢を係ル、金ヲ打足ヲ止備を
(17)
正シ、南詰ニ備フ、二ノ手押出大凡前同様、夫ゟ操引をなし 御覧所少シ北ノ方ニて惣軍座
備となし、昼飯を食ス、此間ニ御守衛ノ方へ壱藩ツヽ代ニ弁当を遣フ、粮食終而先軍操出シ
二ノ備東ノ方へ人数を横畳ニ致し、横打ニ備へ、先軍ゟ兵ヲ操出シテ右ノ翼と成シ、徒士長
鑓を取テ左ノ翼と成り、鉄砲早打を為ス、二ノ備ゟケーヘルヲ持シ戦士、鑓を為持テ左ノ方ゟ出
早打ヲ為ス、金を打惣軍一斉ニ進ミ、惣発シテ戦士鑓を入御旗本を進メ、御直ニ御下知有之、
惣軍声を発シテ駈入足ヲ止、夫ゟ締引惣而五段横畳、 御覧所少シ北之方ニて惣軍備を
なし、地懸候、夫ゟ横畳と成して引取、 右終而因州侯行列ニて北ノ方へ廻り、南へ向テ備、
惣人数大凡千五百程、是も三ツニ分、足軽惣而惣鉄砲、中ニケヘル四十挺程も有之、士弐十人程ヤアケル筒
ニ而撰打、足軽操懸操引、其後惣軍一斉ニ進ミ惣発、煙ノ中ゟ戦士鑓を入懸引、惣而
山鹿素水流ニて致候欤思れ候、会津ハ長沼仁斎伝之様子、右因州終而本ノ固メ場へ帰り、
引続而阿州侯御操出、是も野服、殿様斗火事羽織、旗数弐拾流程、惣人数千人程、鉄砲・長
柄兵ハ無之、操懸操引等致終ル、夫ゟ上杉侯、是ハ惣而西洋流ニて初士之ケヘル組、次ニ足軽ノ
ケヘール組、次ニ御馬印ノ旗壱本、御先乗馬上壱騎、上杉侯御馬御近習十人程、此御近習様之者ニて組〻を駈廻り、
遊軍相勤候様子、其跡ゟ御家老壱騎、旗壱本、家来様之者ニ者口付斗り、三十匁組四十人召連、惣人数
凡五百人程、旗弐本、馬三疋、家来・雑兵一向無之、鎗も無之、刀を後へ廻シ候、惣而御直御下知ニて
組〻ニ壱人ツヽ頭有之、外ニ手明之者壱人も無之、又惣供ハ御固メ場ニ残り居候組〻を引廻し
操懸致候、又惣軍を弐段ニ一文字ニなし、三十匁弐十人ツヽ左右へ少シ進ミ早打致候処、追〻夜
ニ入火見へ候故、殊外ニ目立、殊ニ三拾匁ハ強薬を込候故、公卿衆ハ驚き居候様ニ見へ申候、
又御場所左右御篝四十ヶ所余火気天に移り、又御台張桃灯、諸家之高張を並へ、目を驚候
事ニ御座候、今日備前侯之馬揃も可有之之処、夜五ツ頃ニ相成候故、只行軍ニ而直ニ引取ニ相成、夫ゟ
(18)
因州・阿州・米沢ノ三家行列ニて引取、終而堂上方御引取、漸五ツ過頃橋本殿御差図ニて引取、
宿へ帰候ハ夜四ツ過ニ相成候
一今日橋本殿へ参り休息仕居候処、普請美を尽くし、殊に床置銀ノ岩ニ銀鶴弐羽、
中ニ水昌（晶）之玉〈圣三寸程〉、鶴羽ノ先ゟ羽先頃五寸程有之候、又棚之上ニ四分一ノ雁を○■○カ○ヤ〈ヤカヤサン〉ノ台ニ
とめ、足を金ニて作ル、其美なる事不可言、是ハ 和宮様之節江戸ゟ被下候物ニも可有之哉、
家作者昨年 公辺ゟ御普請被成下候と申事、余り見事なる故認置
一八月五日、朝けあげニ梟首有之、右者大津宿之者ニて、春嶽侯御宿致候者之
由、又朝敵春嶽ニ宿をかし候者ハ追〻右之通ニ致候旨之捨札有之候由
一八月七日、本納寺地中真浄院江引移り
一八月八日、三条殿ゟ本納寺門江御幕打、御守衛人数屯所と言札を懸、台
張御提灯左右へ出ス、又諸藩へ御守衛人数 松代と言札御渡ニ付、門〻へ打
置申候
一八月九日、兼而伺ニ相成居候熨斗目長袴用意不仕候而宜旨御差図有之、
又看病願候者、代り無之候而も、往来日数之外三十日位之儀者願之通可
仰付旨、御附札有之
一八月九日朝、島原辺ニ首なし之胴壱ツ有之、首ハ不知候由
一八月十一日、四条ト三条と之間ニ切捨置候男壱人、腹ニ土を懸、首ハ弐間程
脇ニ有之候由
一同十二日、四条橋ニ掛置候札
孝光
(19)
右之者高貴之御方之落胤抔偽り、先年来処〻ニおゐて度〻不儀之
金銀貪り取、近年ニ至候而者 勤王之名をかり、実者己か利欲を遑（逞の誤カ）せ
む為に奸吏共に契りを結、妄ニ党類を集、種〻姦謀相企候段、不届
之至ニ付、天誅如此 亥七月廿七日 右之趣ニ相聞候間梟首可申付之
処、金銭を以二條殿御一旅之部と奉称、二條殿ゟ御用趣有之候、言語
同断之事ニ候得共、先対御高貴御方免一等、己之居住今宮之
辺ニ打棄候、其意さとらさるものゝ為ニ認之事
亥八月十一日
一城州葛野郡朱雀村領之内、千本通丹波口ゟ壱丁斗北之方道端ニ、裸
身ニ而首無之 男死骸、 右道端ゟ凡五間斗西之方字
岸ノ浦与申田地中ニ有之候、 男首、弐拾五六才斗、右検死之上三日
肆申付置候間、心当り之者有之候ハヽ、右村役人江引合之上、西御役所へ可訴者也
亥八月十一日
一加茂川筋東堤北絲橋町掛二條仮橋ゟ六間程南之方東江寄川原ニ、果
居候 男四拾才斗、 着用 木綿藍嶋単物一、白木綿足袋一、
小紋縮緬財布一、右之通之者検死之上人□不相分候ニ付、死骸三日肆申付
置候、末前同文言略ス 八月十二日
一八月十三日、暁七時頃中立売通葭屋町辺出火ニ付、本納寺地中ノ諸藩申合
之上出張、承明御門前江詰ル、橋本中将殿御詰有之、追〻鎮火之様子ニ付引取候様
御差図ニ而、一同引取
(20)
右出火之様子追〻承候処、葭屋町通中立売上ル西側大和屋荘兵衛忰荘三郎
之住居之由、此荘兵衛と申者、此程八幡や夘兵衛之首を梟候節之捨札ニ有之候
横浜交易五人之内ノ壱人ニて、其頃何方へか立抜、交易之糸を向屋敷忰荘
三郎方ノ蔵ノ内へ入置候処、十三日夜五ツ頃壬生浪人町年寄之方へ参り、今晩荘
兵衛土蔵を焼打致候間、町内之者壱人も罷出申間敷旨相触候様申渡候ニ付、打驚
早〻町内江触候処、追〻浪士共打集り、西側荘三郎住居之方、糸類入置候土蔵之
上下ニ有之候貸屋を毀取、先後へ火之不散様ニ致し、土蔵之内へ火薬を以火を
懸焼払、追〻青山侯・会津侯等之火消御人数出候処、町内之者ハ壱人も不出、壬生ニ罷在候
浪士三十六人、何れも白はちまき・たすき、袴を高く上ケ抜身を持蔵之
廻りを廻り、板切等を持火を付居候ニ付、火消共も隣の屋根ニ登り居手出し
不致、夜明候而も浪人共交易之品〻焼居候由承候ニ付、四ツ時過見物ニ参候処、
中立売通り堀川之橋へ参候へハ、見物の男女夥敷、何分近く迠ハ寄付兼、
拾間程脇ニて見候処、何者共不知、東側荘兵衛本宅之方内ゟ棒ニて屋根を
突上もく〳〵と致居候、又ラシヤ毛氈等を引さき棒ノ先へ附、旗之如くニ諸〻
江立居候、町中へ糸之類其外諸道具投出山之如くニ有之由、夫ハ見物人ニて不見、
屋根之上ニ浪士様之者壱人差図致居候、見物之者ニ何者が毀候やと承候処、何れも
不存候得共、多分ハ西陣之者共之○者〈由〉、此者共ハ昨年春頃糸高料ニて織物
出来兼、糸之交易御差留ニ相成候様願立致候、其頃西陣一同風呂敷之四
すミを取て袋之如く致し、町〻をもらへあるき候、其時分此大和やを
打破らんと致候者共此凶ニ乗シ致候事之由、朝五ツ時過ゟ夜九ツ時頃迄毀
(21)
居、又諸道具諸品を焼払立去候由、誠ニ目も当られさる働ニ御座候
一同日朝、三条御制札場へ男首壱ツ、棒之先ニ髪を結附、両耳へ穴を明縄を通シ
後ニて結付梟置、捨札無之、追〻承候処、朝迠ハ捨札有之、首も二ツ有之候と申者
も有之候、此者者西六条御家来ノ町奉行を勤居候松井中務と言者之由、是ハ先日越前
侯之御国江参り両三日以前罷帰り、病気ニて罷在候処、夜四ツ頃浪士共参り、
首を取候と申事、又同所御家司島田右兵衛少尉をも打取一同ニ梟置、捨札
ニ朝敵春嶽ニ宿を許候義ニ付、種〻之悪事を記置候、其捨札と嶋田之首をハ
何者か取かくし候由
一同日、誓願寺ニ張置候札
妙法院宮御貸所
役人
富小路夷川辺
津田織部
堀勘太夫
右之者共、預而宮之御名目を飾り手広ニ金子貸付、口入料と称し
過分之金子を掠取、期限ニ外れ候向へハ自分召仕候奴僕を以令催促、
借主并連判人ゟ日々□用取立、若彼是申聞候方ニてハ、使之者高声
を以叱り付理不尽ニ取受持帰候躰、以之外成義ニ候、事ニ寄候而者、出役
と称し、昼夜ニ不限多人数召連差向居才足（催促）致候、乱妨相働候次第、
御時勢柄貪賎之者難渋至極之有様不忍見事ニ候、此段如何なから
正議士御衆中へ御訴申上候間、篤と御憐察御しらへ被下候之様、偏ニ仰
希上申候、以上
八月
(22)
一為今度攘夷 御祈願大和国 行幸、 神武帝山陵
春日社等 御拝、暫 御逗留、 親正（征）軍議被為
在、其上 神官行幸事 右之通被 仰出候
八月十三日
右者十五日当番ニ罷出候処、同所御番人江御触有之候由申聞候
一八月十四日、四条侍従殿姫路ゟ御帰着
一大和屋荘兵衛宅ゟ十三日ニ金子三千両出候由、外ニ糸荷可有之と尋候処、
かくし穴有之、内ゟ糸十五葛籠、屏風弐拾五双内金屏十八双出候付、焼捨候由、同日
四ツ時堀川通四条之上辺ニ出火有之、夫を機として火消共ハ引揚候
一八月十五日、東園殿紀州ゟ御帰京有之候
一此程会津侯御人数之内六百人、此度代合之処、先三百人京都出立、三十里程
参候頃何故か御呼戻シニて、又〻帰京致候申事、十四日十五日頃追〻着之様子
一蛸薬師ニ十津川出張と言札を懸、菊之紋之幕・台張等出し候、是ハ大和国十
津川と言処七十六ヶ村有之、 後醍醐天皇之御隠家ニ相成候処ニて、今以除地
ニ相成候処多く有之候由、郷士様之者ニも御座候哉、夥敷参り候、何故か不相分候
一大和国西本願寺派之出家、八月七日八日頃ゟ追〻上京致し、是迄止宿致居候
鐙屋还（抔カ）江も移（夥の誤カ）敷参居候、是ハ本願寺焼打等之札を張候故固メニ参り候哉
と言風聞も有之候
一近日長州ゟ留袖ニ紋を附候を着し、股引之様なる小袴を着候者共追〻上京
致候、是ハ郷士様之者ニも有之候哉、侍之様ニ致し出候節も有之、又車を引候節
(23)
有之、侍共、足軽共、仲間共不相分候者移（夥）く御座候
一八月十六日、三条大橋ニ布屋彦太郎町内ニて張紙致候由、遅ニ承候ニ付見物ニも
不参、書面分兼候、風説ニてハ、先頃之捨札ニ右彦太郎家財不残町内年寄ニ而
預り置候（様脱カ）ニと有之候処、其後差図無之、其上焼打致候还（抔カ）と申風聞有之候ニ付、
右取斗方之才足（催促）致候札と之事ニ御座候
一同日、北野辺ニ梟首有之候由、遠方故委細不相分候
一同十八日、御幸町六角上ル町ニ有之候張札
乍恐歎願奉申上候
一〈先か〉今夕当町江御張紙御座候ニ付、驚入早速近江屋喜助第一ニ相調候処、
一昨夕潮田夘平次并庄屋善次郎両人、其外下部二人罷越候処、今昼
時国元ゟ用向出来候趣使ひ参り出立仕候而、喜助方ニ罷在不申候間、此
段御断申上候、右喜助方ニ夘平次・善二郎止宿為致候段、何共奉恐入候ニ付、
喜助并召遣ひも不残引取人方ゟ直様国元江差送可申様申居候、全く
町分之義者喜助方江右之者共止宿罷在候義者一切存不申候ニ付、何卒格別
之御憐愍を以右之趣御聞届可被成下候（様脱カ）奉願候、以上
八月十八日夜 当町役人
一八月十八日、晴天、暁七ツ時頃北東之方ニ銃声数度相響、本納（寺脱カ）地中辺ハ何れも目を覚候、
乍去何方ニてか早朝ゟ調練を始候なと申居眠り申候、扨又今日者当番ニ付、例之
通六ツ過ゟ仕度致候、五ツ前ニ出宅、寺町通り丸田（太）町辺へ参候処、何となく人立有之、
又往来も賑く馬ニ而乗切候者も有之、事替り候様ニ見候付、所〻ニ而承候得共
(24)
一向不相分、寺町御門前へ参候得ハ、会津侯之御馬・御箱等有之、又御供馬具足・両
懸等も見へ申候、夫ゟ清和御門江参候処、往来之人〻并諸御番所交代之人数等
追〻滞り居り、御門通行出来兼候趣ニ付、御門へ罷越承候所、御門江之御達左之通
諸御門出入之事御沙汰有之迄被差留候事
因州・阿州･上杦・備前・会津・御諸（所）司代・前関白殿
右之外者、堂上方を始何人ニても壱人も通行不相成候間、御守衛御当番ニて
も御沙汰無之内者通し兼候旨相断、猶又壱人申候者、中立売御門者出入も
有之哉之由、此方へ廻り候ハヽ通し可申哉と内〻教呉候、夫ゟ色〻と評議致候、先
三條殿へ参り伺可申と先此処を引取、追〻火事羽織ニて出候者多く相見候
ニ付、宿寺へ火事具を取ニ遣、夫ゟ三条殿江参り、御様子柄且如何可仕哉之旨
相伺候処、三条殿ニも何故之騒か御分り不被成候ニ付、只今 御参内被成候処、御門留
ニ而無余岐（儀）御引取被成、委細不相分候間、暫扣居候様ニと之事、猶又雑掌共ゟ、
中立売之方通行出来候ハヽ、先其方へ廻り可申と之事ニ付引取〈其頃追〻諸家／伺ニ出居〉、
夫ゟ北之方を廻り石薬師御門・今出川御門・乾御門等を承候処、何れも同様ニて
不通、其内ニ肥後之隊長乗切参候ニ付承候処、是も委細不相分、今朝之銃声
何れニ承候哉、先刻ゟ諸〻尋候得共不相分と申、又〻乗切参候、夫ゟ中立売
御門江参候処、加州ニて固居候ニ付、御守衛当番之趣相断候処、漸〻御門相通候、御門内ニ
入候得者、北之方ハ加州、南之方者会津ニ而相固メ、何れも火事装束ニて鉄炮附火縄、弓
組者矢を持添、平士者取鎗ニ而厳重之固メ、大銃还（抔カ）も玉込致居候、夫ゟ御築地際
ニ至候得者会津侯之御固、四門者勿論、御築地外廻り不残無透間人数立並ひ
(25)
何れも鎗・鉄炮を構ひ既ニ戦ひ初り候様ニ相見へ申候、夫ゟ日ノ御門へ参候処、
御所ゟ御差図無之内者壱人も不相成旨ニ而引返候、南門前ニて桑名藩ニ行逢、
一同公卿御門江廻り候処、是又同様通行不相成候ニ付、無余岐（儀）公卿門前之人やど〈コシカケノコト〉
りに屯し、彼是と評義之上隊長斗ニて三条殿江伺ニ参り、外者人やとり之
内ニ固居、此処ハ中立売と公卿門之通りニて通りも多く、殊ニ外之九門ハ不残
御〆切ニて、中立売之壱ヶ所斗り、内ノ四門も不残御下（〆）切ニて、公卿門之壱ヶ所斗り
往来有之と申事故、堂上・公卿・諸侯・諸藩士皆此処へ馳集り、何れも御門内江
入らんと逼り合候得共、壱人も不入、堂上方ニても無余岐（儀）被引取候も有之、又被参候
も有之、土州侯之御叔父兵庫様と申方、御馬印之御旗を為御持御乗切ニて御出被成
候得共、是も御参内者如何欤人斗ニて不相分、追〻土州之御人数陣羽織半頭〈ハツムリ〉又ハ鉢
巻たすき切火縄取鎗ニて駈附、其外九門内御固之人数或ハ陣羽織、又ハ火事具、思
ひ〳〵之出立ニて馳集り移（夥）敷事、会津斗ニても何千と言御人数之処へ、諸藩馳集候
故、万を以指ひ可申中難見渡人数ニ御座候、且又非常故九門内ニても馬ニて駈廻り候者
斗ニても移（夥）く御座候、扨又隊長三条殿へ参候得共、今以御様子柄一向不相訳、乍
去先三条殿方迄引取候様ニ■■■■〈と申越候ニ付〉、桑名藩一同三条殿門前へ参候処、諸
藩御守衛不残参居候故居所も無之、門之北之方ニ集り居、門際ニ者平日三条殿へ
相詰居候、長州・土州・肥後三藩之人数五六十人、白鉢巻・白たすきニて鎗引下ケ
門前を固居、又御守衛者諸藩思ひ〳〵ニ陣取、陣羽織・火事羽織思ひ〳〵之仕度、又
当藩之火事具も此処へ参り居候ニ付、火事装束ニ相成申候、其内ニ追〻甲冑を着候
向も有之、又着込半頭等も有之、又鉄炮へ玉込致し、或ハ鎗ニ紙桐油等之鞘を懸候も
(26)
有之、旗纏ハ勿論、大藩ニてハ金皷迄も用意致居候而、今ニも戦始かと被存候、
久保三郎殿も不快ニて見合セ居候処、如形（斯）騒動故、馬ニて此処へ乗切被参候、四ツ半頃ニ
相成、壱幅四尺程之布へ御守衛人数と認候を高張之棒へ付候時拵之小旗を弐本先ニ
立、三条殿御引連ニて寺町通へ出、丸田（太）町へ懸り堺町御門へ参候処、御門不通候ニ付、御門
前ニ有之鷹司殿之裏門ゟ入、台所前を通り、門を出て玄関前ニ至ル、是ゟ御守衛人数
不残白紙壱枚ツヽ胸ニ附候様ニと之御差図ニて、懐中紙を角取紙ニ致し胸ニ付ル、此処ニ
家来共を残シ置、何れも取鎗ニて北之方之門を入表庭之様なる処へ相詰居、追〻
八ツ頃ニ相成候得共弁当不参、殊ニ今朝も六ツ弐分位ニ朝飯を食候事故、何れも空腹
ニ相成、宿寺へ才足（催促）申遣候所、宿寺をハ四ツ過ニ者持出候由、左候へハ九門ハ不被通、其上
居処も不知迷居候やと、又〻跡尋等致し、漸八ツ半頃尋付昼飯を食候得共、湯水も
一向無之故、別而食事も落付兼候様ニ存候、又堤氏も震ニて永〻引籠被居候処、此騒ニ付
押而被参候、壱人宛も増候故、自然与勢も増申候、偖又諸藩者追〻甲冑を帯し、
或鎖り・半頭、其餘多分ハ陣羽織を着候故、具足之用意致度存候得共、今朝
当番ニて出候故右等之心組も無之、又宿寺ニも聢と致候留主居も無之候故、当惑致し、
内〻申談事、青木・久保両氏馬ニて具足之用意ニ参ル「、又三条殿ゟ晒壱幅四方ニ
菊と字を書きたるを壱ツ宛御渡有之、角取紙と附替ル、又御守衛之人数を二ツ
ニ分ケ、南之方大垣・久留米・芸州・若州･彦根・松代・松山・白川・庄内・高松、右十藩、北之
方者不相分、尤昨晩之泊宇和島・姫路・筑州〈弐十人〉・秋田・森（盛）岡、右之外相残、不残北組か、
又玄関之方ニ十津川之人数六十人、緋ゴロフク陣羽織を着し相詰居〈此陣羽織菊之御紋付／御所ゟ被下候と申事〉
吉川監物も人数夥敷召連参居、其外三条殿警固之三藩之人数等、惣人
(27)
数下部迄指候ハヽ万以上之人数ニ相成可申、追〻日暮ニ相成夕弁当遣候処江、
諸隊長御呼出ニて、何れも大義之趣被仰候ニ付、昨夜ゟ何故此様なる騒きニ相成候義哉
伺候処、何か被仰候得共、御小音ニて不相分候ニ付、諸隊長申談事之上久留米隊長木村
三郎筆執ニて、左之通伺書差出之
昨夜ゟ御事情、誠以切迫之処と奉存候、然処御親兵之義ハ何方迄も
悉皆御守衛可申上候間、起源之義委細承り度奉願上候
八月十八日夕 御親兵中
右之通伺候処、早速御差図無之、其内ニ何か子細有之候哉、三条殿迄も先
鷹司殿方をハ御引取被成候間、引取候様ニとの事故、押而伺候処、左候ハヽ一先大仏へ
引取、其上御沙汰可有之と之事ニ付、左候ハヽ一同大仏へ参り委細伺度与、夫ゟ
御守衛人数と言旗を先江立、三条殿并御両三人御冠之おさを巻揚、糸
ニ而結ひ、白たすきを懸騎馬、御供之諸大夫ハ火事羽織ニて、腰ニ三
之字を書たる腰印を差、雑掌ハ何れも上下又ハ肩衣等江胸懸斗り
を懸候、其外三藩の警固并吉川監物・十津川人数等厳重ニ相固、御守
衛人数不残堺町御門前ゟ丸田町通り寺町へ出〈此処へ青木・久保両氏帰り来ル〉、夫ゟ四条橋を渡る、此頃ハ
夜ニ入候得共、桃灯出違ひ、追〻駈付候へ共未た不揃、夫ゟ大仏之宮ニ至候処、或ハ大仏
之方、或ハ大仏之宮之方、又新日吉之前、智積院之辺等思ひ〳〵ニ屯り居候処、三条殿と
外御壱人者智積院之方へ被参候ニ付、御跡ニ付同所之庭迄参候処、此辺惣而毛利家
之宿寺ニ相成居、門〻を固居候、又外堂上方ハ宮之方へ被参候由ニて、三条殿も宮ノ
方江被引取候ニ付、又〻宮之方へ参ル、表門〈毛利／御固〉を入南之方塀重門ゟ表庭江出ル、
(28)
御殿上之間ニ堂人（上）方五六人〈三条殿・三条西殿・東園殿・四条殿／澤殿・錦小路殿右六人か、聢と不相分〉、次之間ニ諸大夫・雑掌共、其
次ニ随従、警固之三藩、其北之間ゟ玄関之方御守衛人数思ひ〳〵ニ陣取候得共、遅〻参候
故庭之方ニ居ル、又庭ニ者篝三四ヶ所ニて焼き台張も多く出、餘程広き庭ニ候得共、
追〻押合候様ニ相成候、四ツ頃か、隊長御呼出しニ而、何れも是迄大義ニ付名面書出候様
有之候ニ付、則名認差出候処、暫之内三十三間堂へ参り休息致候様御達ニ付、夫ゟ
三十三間堂江参り候所、未た壱人も不参候故、場所を見立、堂内ニ有之候腰懸を
分とり、堂守ゟ敷物をかり休息致候、其内ニ雨降出シ、跡ニ相成候者共者居処も
無之、漸軒下へ入候而もしふきかゝり、別而難渋と察入候、此堂ハ長サ六十六間ニ横も
餘程有之候得共、屋根下ニ餘ル程之人数ニ御座候、又是迄参候途中見物人夥敷
集り居候処、追〻近辺ニて戦初り候なと申下説も有之候由、又長州之固ニて人を払候故か、
見物人者勿論、此庭先之茶屋へ参り見候処、皆立抜壱人も居り不申候、其内ニ深夜
弁廻候ニ付食候処、庭先ニ井戸も有之、鷹司殿ニ居候節ゟ余程宜く御座候、乍夜中
殊ニ雨強く降候故難渋ハ申迄も無之候得共、気力立居候故か、時ニ者夫程とも不存候、七ツ
頃又御呼出ニ而隊長罷越候処、三条殿 御参内御差止ニ相成候間、万端御差図被成
兼候旨御達ニ付、夫ニ而者何れ之御差図受可申哉と伺候処、其儀も差図ハ出来兼
候得共、多分 天（伝）奏ニて差図可有之哉、左も無之候ハヽ野宮宰相中将殿か、又ハ是迄病
気等之節滋野井・庭田・橋本等ニ而差図致候間、此方へ成共伺候様ニと之事ニ而、
隊長評議中へ久留米陣（隊）長之方江天（伝）奏野宮殿ゟ人数召連罷出九門を固候様
ニと申来候由、然処是迄ハ惣而三条殿御差図故、何れへ成共三条殿ゟ御引渡ニ
相成候上ならてハ、 天奏之御差図たり共受兼候なと評議有之、又何方ゟか聢与
(29)
被仰渡無之内ハ三条殿へ御附添申候と云も有之、又兎も角も滋野井殿江参り伺と
申も有之、評義落合兼、先三拾三間堂江引取、其間ニ色〻之風説有之、三条殿も
何か御疑ひ之筋有之御参内御差留ニ相（成脱カ）候処、押而関白殿へ被参、御守衛之人数も右
江御附添申候故、弥 御所ニてハ御疑有之候と申風聞も有之、又三条殿初其外
多勢洛中御住居も不出来と申風聞も有候処へ、諸隊長之中ニ者三条殿之
御疑を晴し度なと存居候も有之哉、又何国迄も御供致なと申様之者も有之、当
藩ニてハ元ゟ三条殿之為に参り居候義ニ無之、又三条殿如何様之御疑を被受候共、
御守衛之人〻之知ル所ニも無之故、何方へ也とも伺候様ニと有之候事故、是ゟ何方成共
罷越相伺可申と内談致候、猶又三十三間堂之庭ニて諸隊長再評議之処、兎角ニ
決兼候故、此場ニてハ一先一統引取候上、猶銘〻存寄次第何方へ也とも伺候様ニと之事ニて、
一同三十三間堂を引払隊長大仏之宮へ参り、右之段御断申上、十九日暁六ツ時過宿
寺江引取
一追〻承候所、国事御用懸之方〻十三卿〈此十三卿ハ三条殿之外／御名前不相訳候〉洛中御住居不相成旨被
仰出候由、御書付振等ハ一向不相分候
一長州叛逆之聞有之ニ付、壱人も在京不相成、不残引払候様被 仰出、十九日
朝ゟ廿日之夜迄ニ追〻引払候由、是先頃長州ニて異船打払候節、小倉ニ而
兵を不出を恨ミ、小倉を制候為に大和国 行幸を奉進、御途中ゟ
長州江可奉行移と逆意を企候処、此程因州侯 御参内之節十三
卿ゟ之被仰含ニ、自然 行幸之儀御尋等有之候共、委細之義ハ決而不申上
候様ニと口を被留候故、因州侯者弥御不審ニ被思召、 御逢之節ニ至り
(30)
行幸之義弥微細ニ被仰上 行幸を御差止被成候ゟ事興り、追〻御穿鑿
御座候処、弥長州隠謀相顕候と之風聞、又長州ニてハ行幸之企も違候故、別ニ
一計を施し、朝敵春嶽三万之兵を率て叡山ニ立籠候由風聞為致、十八日
夜急ニ御立抜を可奉進と手配り致候を、会津侯ニてハ兼而承知被致候ニ哉、
同夜九ツ頃御人数御引連ニて御参内有之、又中川宮ハ、春嶽叡山ニ籠候趣
不埒ニ至極之事、早速打取可申と相触人数を集め、又薩州之人数を引連
八ツ時頃知恩院ゟ乗出シ、寺町を上り、石薬師御門前ニ而俄ニ御所へ御繰込ニ
相成、薩州御人数ニて御築地内を固メ、会津ニ而御築地外廻りを固メ、平唐御門
内御守衛当番ニて九門江触て御門御〆切ニ相成候処、長州ニてハ七ツ頃人数を揃、
屋敷内ニて大小銃共税（ママ）発して押出し寺町御門江参候処、最早御門御〆切、
其上厳重之御固メ故引返し堺町御門へ廻ル、此御門ハ長州之御持故、此方江
廻り候哉、然処長刕御固メ之脇を薩州ニて固居候故、同藩ニても不通候
と申事、其後ハ何方へ参候哉、誠ニ危所ニて顕候と申風聞有之候、乍去
中川之宮も先頃姉小路一件以来御参内御差留ニ相成居、又薩刕
も九門内御差留相成居候由、餘り表裏之義故、追〻如何相成可申哉
寝食も不安存候
又御守衛御人数鷹司殿ニ参り居候節、三条殿雑掌案内ニて長州・桑
名其外三四藩ニて鷹司殿表門ゟ出、烏丸殿之迎ニ参候処、堺町御門内
薩州之御固ニ而差留候を強而通らんと致候得者、薩州ニてハ勝手次第
ニ致候様ニと相断、大銃ニ口薬を込、小銃之火蓋をむき、弓ニ矢をつき、
(31)
槍を抜進ミ出候顔色、実ニ危く見へ候ニ付一同引返し候由、桑名藩之
咄ニ而承候
一十九日、野宮殿へ隊長承り万端之取斗方伺候処、未た御極ニ者不相成候へ共、
御守衛之事故、兎も角も九門内ニて場所を見立相固居候様ニと之事
故、引取方等之義も御差図被下候と承候得者、何れ其節ハ御差図致候へ共、
今日ニて済候事哉、又ハ明日も明後も固居候事知れ兼候間、御人数之内半分ツヽ
罷出交代致候様ニと之事ニて、夜六ツ過ゟ火事具ニて出張、中立売通り
ニて日之御門前ニ至り、仙洞御所日御門之方ニ有之通用口之屋根下ニ固
居候得共何之沙汰も無之、只九門内不残厳重之御固ニ而、甲冑・陣羽織等
着用、何れも切火縄ニて、今ニも戦ひ可申気色ニて、実ニ不相分候ニ付猶申
談事、四人残り、五人者宿寺へ返り敷物等之用意致候、深夜弁当等遣し
少〻休息致候、又七ツ頃ゟ出張交合、此夜八ツ頃ゟ雨降、塀之屋根之下ニ居候
所、雨落之しふき顔迄はね上り、弁当を食候ニも雨かゝり難渋、追〻夜明
翌廿日四ツ頃ニ相成隊長野宮殿へ参り、明日者当番ニ付、追〻引取少〻ツヽ休息
致し度旨相断引取申候、此とき漸清和御門通行初り候
一廿日、夜九ツ頃御守衛御用所江隊長御用之旨申来候ニ付、御場所を尋候
所、三条殿之直向之屋敷と申事、右江隊長御呼出ニて、畑肥前守・姉小路
駿河守両（ママ）江御守衛懸り被仰付候由相達、右畑肥前守ゟ今晩当番ニ罷出
交代致候様、尤今晩ハ遅く相成候得共、宇和島・姫路等十七日ゟ詰切ニ付、一刻も
早く代り候様被 仰出候旨申通候ニ付、夫ゟ一同火事具ニて七ツ時頃参り交代、
(32)
桑名藩ハ平服ニて被出候、翌廿一日四ツ頃津幡と交代、是迄之順ニて者
肥後ニて可代之処、何か御差支之義御座候と申事ニ御座候
右宇和島・姫路と代り合之節ハ、此度御普請有之候御番所之方ニ罷在候ニ付、先
夜ゟ之次第承候処、十七日夜九ツ頃ゟ何欤騒敷、其内ニ平唐御門内御守衛ゟ万端
心附居候様ニ申来、其内ニ白川殿ゟ宇和島之隊長を被召、万一異変之義
有之候ハヽ 神器を守護致し致候様被仰渡、且内侍処を固候様ニと之事ニて、
新御番所之前江立並ひ、又壱藩弐人ツヽ四人ハ内侍所御玄関之次之御間江相詰居、
惣人数弐拾四人揃居候様被仰渡候処、折節両藩共病人有之、十七人罷在候へ
共、不残出候而も弐拾四人ニ者不相成旨申立候へハ、左候ハヽ不足之分ハ御門へ罷出居
禁裏附之与力被相加候間、其節ハ申合相勤候様ニと被仰渡、右之通相勤居候処、
立通しニてハ続兼候間、新御番所之方拝借致休息致候由、又十八日ニ者一日御賄被
下、其後ハ弁当ハ通用出来申候由、何れも具足等迄持参被致候、然処右内侍所
之義ハ両藩斗之事ニて代り合之方へハ御達し無之故、申通位之事ニてハ御大節（切）之
御宝器守衛之義ハ如何哉と評議致候内ニ、内侍所之御番引取候様被仰渡候ニ付、左候へハ
新御番所之方も拝借致し候処(事)故、是迄之御番所之方へ引越候上交代致候ニ付、
万端以前之通、又桑名藩へハ平常之通と御達有之候由ニ付、平服ニて被出候由、乍去
諸御門御固メ等ハ先夜之通切火縄ニて勤居
一今般 行幸御延引被 仰出候得共、於攘夷ハ早く可遂成功候、依之勤
王之諸藩不待 幕府之処置速に可有攘夷之旨、 叡慮被為
在候旨、被 仰出候事 八月廿日
(33)
一八月廿二日、朝祇園西之門江張紙
松平肥後守
此者固陋頑愚不知遵奉推戴之大義雖恣凶暴然力微不
能遂素志近者頼逆賊薩人之太刀蔭奉要 朝廷遑暴威
不知、其実為薩人所售愚亦甚矣、神人共恕必可加天誅以匡天
下之大刑者也
亥八月廿一日
一八月廿三日、国事御用所江隊長御呼出ニ而、姉小路駿河守・畑肥前守ゟ申通
壱御番所 東健春門
廿三日
第一日 昼〈紀州二十人／宇和島十人〉 夜〈紀州二十人／姫路十人〉
廿四日
第二日 昼 肥前三十人 夜〈松代十人／桑名十人／忍十人〉
廿五日
第三日 昼 備前三十人 夜 津三十人
以上
右之通相心得相勤候様、尤非常之節ハ内侍所守護可致候様ニと有之候
一先頃正親町中将殿長州江為直使被下候所、此度之騒動ニ付御迎之人数左之通
昨廿二日昼後被仰付
肥前十人、津山拾人、彦根十人、中津十人、若州十人
右五藩人数都合五十人〈先頃警固ニて参候／人数五十人、合而百人ニナル〉昨夕七ツ時迄ニ人数相揃、今暁〈廿三日〉七ツ時出立
致候様被仰渡候由、彦根藩本納寺同地中ニ罷在候故、暇乞ニ被参候〈惣而御守衛／人数之内〉
一昨廿二日、朝祇園町一力と言揚屋へ投入置候書付、委細ニ者不承候へ共、廿二日ゟ三日之内ニ
(34)
故有而、建仁寺ゟ〈加州／宿所〉祇園南側不残火打致候趣認置候由、右故建仁寺廻りゟ祇園
南不残取片付致し出火之如き騒之由、此片付候ヶ所凡三千六百軒程と申事御座候
一壬生住居之浪士ニ町〻昼夜廻り会津侯ゟ被仰付候由、五六十人又ハ弐十人程ツヽ
手鎗を引下ケ黒紋付ニ白嶋之袴・白鉢巻・白千襷ニて、昼夜相廻り候
一八月廿四日、夜泊ニ而出番之処、昼之方肥前藩相勤居候処へ御執次土山淡路守を以、今日
関白殿江 勅使相立候ニ付警固致候様被仰渡候処、肥前藩ニても受兼候き所、是迄平唐
等ゟハ罷出候事ニ相成居候間、是非罷出候様ニと之事ニて、御間欠ニも相成、又御例も有之由ニ付、
先今日者弐十人罷出警固致候由、乍去一同不服ニ付御守衛御用場へ相伺候と申事、当
藩ニても以後之義も有之候ニ付、廿五日退番之節相伺候処、畑肥前之守殿も右様之義
有之候而者、此度三十人ツヽニ相増候御主意不相分候と不承知之様子と申事、猶又差図可有之候事
一寺町誓願寺表門に張置候書付
松平肥後守
此者乱逆之徒を語らひ、去ル十八日昧爽ニ乗し、不意突然勿貞躰なくも
兵威を以て 玉躰ニ迫り奉り、正を扑し邪を挙ケ戊午とし一倍之
大姦を行ひ尚我〻之 主君をして頻ニ乱臣賊子己か党江引入んと
計ル、素より大義におゐて毫厘も不屈といへとも、実ニ天地神人
同憤する所にして、天末一目之晴なし徳川氏未曾有之逆臣以
天誅不免者也 八月廿五日
一八月廿五日、寺町通本納寺前辺へ町奉行ゟ之触廻り候由ニ付、借受写置
中山家公達之由、浪士相交多人数具足着、抜刀・鎗・長刀を携、阿州
(35)
政（路カ）ニて 勅命与偽武具・馬具等借受和州路江立越、御代官陣屋
等放火及乱妨輩〈本ノマヽ〉ハ全徒党一揆を企候もの共ニ付、取鎮方厳重大名江
被 仰付候事ニ候間、右徒党之者寺社在町等江立入、如何躰申あさむき
いさなへ候とも、まとわされ間敷候、若心得違右徒党いたし候もの
有之候ハヽ厳重可及沙汰、右之趣急度相守違背有之間敷、此
旨早〻山城国中江可相触もの也
八月廿四日
一追〻風聞ニ而承候所、中山元侍従〈中山前大納（言脱）忠能卿之次男、当中山前右中将忠愛朝臣之弟、侍従忠光ト云シ／昨年か当春か前大納（言脱）殿不首尾之トキ、名ヲ雪カント欲シ欠落致シ候由、当年十九才〉
〈先頃長州ニて異船ヲ打候節ハ長州ニテ／下知致シ被居候由、先頃ノ別条有之人也〉隊将筑前之平野治郎軍正（勢の誤カ）惣人数六七十人・馬十五六疋ニ而
藁之御紋之旗を立〈八月十七日〉大和国五条陣屋御代官を初六人を殺ス、内壱人者あんま、
弐人生捕ニ致し武器を奪ひ取、〈大和〉小泉〈片桐助作／一万千百石〉之陣屋并河内之佐山〈北條相模守／一万石〉
之陣等ニて人馬・武器・兵粮等を出させ、米百石余用意致候、夫ゟ河内丹南郡
向山村之富家江申付扶持為致、追〻大和高取〈植村出羽守／二万五千石〉之城を攻んと用意致居由、
郡山侯十八日ゟ之騒動ニて急御上京有之候処、直ニ右取鎮方被 仰付、廿三日
京都御出立有之候、又平野治郎門弟水天宮之神主牧和泉守京都江出張
居候処、兄弟三人共十八日ゟ見へす、又壬生浪士廿四日ゟ壱人も見へす候由、是等も
右一揆之方へ参候哉、又徒党之者者十津川へ籠り可申哉と之風聞も有之候、
此十津川一揆江加り候節ハ余程之人数有之由、豊公ゟ赤柄之鎗御免ニて、朱柄千本
組と号し七拾五ヶ村十八庄司皆作り取りニ致居候由、又祭等之節騎馬ニ而
朱柄之鎗を持千人ツヽ出ると申事御座候
(36)
八月廿日御沙汰書 松平左膳様
御上洛 御参内万端無御滞被為済為 御礼、京都江御使
被遣候間、可致用意候
廿一日、河内守殿御渡之御書付写
布衣以上御役人、是迄端反笠相用候処、不弁之品ニ付相廃し、
以来布衣以上之諸役人・御番方等御目印ニ茂相成候間、登
城寄〻諸（詰）場所江罷越節陣笠、左之通相心得、来月朔日ゟ
相用候様可致候、尤も大目付・御目付・御使番之義者、是迄之通
可被心得候
布衣以上 表黒裏金
御目見以上 表藍裏金
但し、正面江輪抜金箔又ハ金物ニ而も勝手次第ニ付可申候事
（図） 二寸五部
右雛形之事
右之通従江戸表申参候間、此段為御知申上候、以上
八月廿八日 飛脚御用所
松代様 和泉屋甚三郎
御役人中様
一医師赤澤多冲門弟越後新発田在田中長被参、左之書付被為
(37)
見候ニ付、写置
（図）
飛車
横飛桂馬
此者儀、飛車の身分として将棋を餝り、歩家へ押入金銀を
うばゐ取り候段、盤面之駒り王かたならす、依之如角令香
車者也 亥八月 正儀
一八月廿四日達書写
当時御召抱之御家来、侍分・下部とも夫々生国出生等御取調一紙ニ
御書附、明日中ニ野宮家江御差出可被成候、出生等不詳浪人躰之者共
有之候得者、 御附組之者召捕可申候間、為御心得可申入候旨両傳（奏脱カ）
江被申付候、尤御摂家様方・諸大夫中江も御伝置可被成候、已上
八月廿四日申刻出ス 両 伝奏
関白様
諸大夫御中
一河刕石川郡切山村ゟ注進
去ル十五日、中山前大納言、公達与申由ニ而、若年之方大将与して
従者百八拾人斗何れも甲冑を着し、外ニ人足百人斗、鑓・長刀・
(38)
抜身等持、道中筋鉄炮打放しツヽ同国狭山北条遠江守陣屋江
押寄、表門前ニ而及応接ニ、夫ゟ乱入致、乗馬三疋・鉄炮三拾挺奪ヒ
取、夫ゟ同国奥州侯石川若狭守領分白木村陣屋江押寄、弓鉄
炮数多奪取、夫ゟ膳所本多領分甲田村陣屋江止宿致、翌朝此
所ニ而人足を取、千早峠中飯致、同所ゟ籏押立和州宇知郡五
条村陣屋代官鈴木源内役所へ押寄、上下弐拾七人斗及殺害ニ
跡放火之由ニ而、夫ゟ同国高取城下江押寄、夫ゟ紀州江打越候由也
是者浪人之大将ニて、京木屋町三条上ル町 平井太郎
亀屋と申方罷在候由 後藤和泉
右両人之内壱人、当廿四日ニ召取ニ相成申候
一山和国一揆之者共申宥被仰付候方〻、左之通
紀州 彦根 郡山 津
一紀州侯者、八月廿五日二条 御城江御着有之候
一八月廿七日夜、当番之処、九ツ時過頃黒谷〈会津侯／御宿寺〉坊寺焼失、諸家相詰候由
一八月廿八日、松平肥○後〈前〉様衆、八並次郎助ゟ之廻状
上打懸 松平肥前守内御守衛方
廻章 八並次郎助
今廿八日、御守衛御用所江御呼出ニ付、私罷出候処、姉小路駿河守殿
ゟ別紙三通（廻達候様）演舌ニ而被相渡候ニ付、御順達致候、以上
八月廿八日 松平肥前守内御守衛方
八並次郎助
御次第不同
紀伊大納言様 松平備前守様 藤堂和泉守様
御守衛方様 御守衛方様 御守衛方様
(39)
伊達遠江守様 酒井雅楽頭様 松平越中守様
御守衛方様 御守衛方様 御守衛方様
松平左膳様 真田信濃守様
御守衛方様 御守衛方様
追而廻状留之御方ゟ御返却可被下候、以上
一非常之節、壱御番所江相詰候人数其御番所相守、他江出役致間敷、
出火之節者、内侍所御附之堂上方之御差図可随㕝
一勅使差掛り御供入用之節者、外御番所人数難揃無拠節者、
執次名前書之人躰ゟ差図有之候ハヽ御供可仕事
一弐四御番所 勅使差懸り御供入用之節、執次ノ名前書ノ人躰ゟ
差図有之候ハヽ御供可仕㕝
一出火之節、諸藩御場所参集及鎮火候ハヽ、御用所ゟ使番を以引取
之義御差図可申事
一御守衛人数年頭・八朔・五節句麻上下之㕝
一御守衛人数以来仮服御場所柄故差憚候事
但、其度〻御用所江御届可有之候事
以上
附札ニて勅使差懸り御供之節
虫鹿織部正 土山淡路守 渡部相模守 勢州大判事
東辻図書権助 渡辺出雲守 鳥山三河介
非常参勤 内侍所
清水谷宰相中将 藤波二位 持明院右京督 五辻三位
(40)
吉田三位 西五辻三位 高松三位 錦織三位
藤井三位 松木中将 高丘兵部大輔 町尻少将
白川少将 六角大蔵大輔 倉橋左馬頭 石野治部大輔
吉田侍従 六条侍従 油小路大夫 唐橋大夫
中園大夫
右者夕刻姫路様衆ゟ廻達ニ付、則松平左膳様衆へ順達致候
一八月廿九日、御守衛御用所ゟ箱入ニ而持廻り至来、左之通
持廻回文
非常之節、御親兵日御門前通、後院（院之御所）築地際江馳集候様御
達申置候処、自今承明門江馳集候様、日御門北穴門（非常用の小さい門）ゟ往来之儀、
更伝奏衆ゟ被仰渡候、尤引取之義者別紙名前之人躰ゟ
差図有之候、此段御達申入候
八月廿九日 御守衛御用所
御用掛
次第不同
紀伊中納言殿 松平越前守殿 井伊掃部頭殿
御守衛御中 御守衛御中 御守衛御中
松平隠岐守殿 松平出羽守殿 御名殿
御守衛御中 御守衛御中 御守衛御中
津軽越中守殿 松平安芸守殿 酒井雅楽頭殿
御守衛御中 御守衛御中 御守衛御中
松平肥前守殿 松平大和守殿 松平左膳殿
御守衛御中 御守衛御中 御守衛御中
佐竹右京大夫殿 松平保之助殿
御守衛御中 御守衛御中
別紙名前書、前〻有之執次七人之名面同様ニ付略ス
(41)
一八月晦日、尾州侯粟田口ノ宮江御着
一一揆之者共追〻人数相加り、千余之人数ニ相成、高取之城〈大和国植村出羽守／二万五千石〉押寄
候処、高取ニてハ兼而用意致置候故、人数繰出シ四拾人程生捕、八人殺候処、相残
何方へ欤引取候趣御届有之候由、風聞承候
一平野治郎一揆之内ニ加り居候様風聞有之処、今日頃之沙汰ニ而ハ、名を改平井
太郎と名乗洛中ニ罷在候由、壬生浪士共江召捕被 仰付所〻穿鑿致し、木屋
町三条上ル辺ニ住居致居候様申立候故、此程亀屋ニ罷在候浪士召捕ニ相成候処、
全く人違ニて、又〻何方へ欤立抜候由ニて、又〻壬生浪士手訳ニて穿鑿ニ出候を聞、
八月廿七日ニ平井太郎壬生へ参り、正義之者を召捕候義心得難由議論致し、終ニ
浪士共之方ニて平井ニ服候由風聞、其後浪士共三十程壬生へ帰居候由
一九月朔日、江戸飛脚屋和泉屋甚三郎ゟ左之通申聞
酒井雅楽頭様 右廿八日御発駕被遊候 松平因幡守様
高力直三郎様 松平下総守様 大久保加賀守様
戸沢上総介様 丹羽左京大夫様 阿部播磨守様
右之通御上京被遊候
一江戸出飛脚定日并書状賃銭 飛脚御用達 和泉や甚三郎
三六九十之日休 一四七八日限り出 二五八正六日限定日
十日限り書状 賃八拾文 八日限り 賃百拾五文
包物壱〆目 壱〆八百文位
正六日限り 四百文 本六日限り 弐百弐拾文
四日限り別飛脚 三両位 書状壱通目方拾匁迄
(42)
一九月三日より肥前藩申合昼泊代り合ニ勤候、今日昼初当番相勤
一九月四日、赤澤多冲咄、七月廿八日か、浪士五十人程丹波亀山〈五万石松平／豊前守様〉城下ニ至、
暫之内城を借度旨申込候ニ付、亀山ゟ人数を出之候処何方へか立去、其内ニ但馬幾（生）
野之陣屋へ押込、武器・糧食等を奪ひ、死人も有之候由、夫ゟ久美浜へ参候由、近辺之
諸侯方ゟ御人数出候由、追〻御届ケ有之
一江州八幡ニ浪士七人隠居候ニ付、彦根侯ゟ御人数出候処、何方へか逃去、右隠置候寺院
并村名主召捕、昨三日京都西御役所江召連引渡有之、又彦根侯ゟ一揆召捕
之御人数六百人程、是又昨三日夕京都通行、大和国へ罷越候由
一大和国一揆之者共者、十津川之山ニ陣取居候由
一於当番所〈九月四日〉詰切之者ニ用事有之候節、以来預り衆与唱候様、畑肥前守申聞候
一奥平大膳大夫様御留守居衆ゟ廻状之趣、左之通
「御用廻状」 上折懸
以廻状致啓上候、然者昨夜御所司代稲葉長門守様ゟ御呼出ニ付
罷出候処、公用人を以別紙之通御書付御渡有之、御同席様方江
御通達可申旨、且御在京之御家来中様江茂御達可申様被
申聞候ニ付、則写致廻達候、早〻御順達御留ゟ拙者方へ御返却
可被下候、以上
九月二日 奥平大膳大夫留守居
富士野彦右衛門
真田信濃守様 栁原式部大輔様 酒井繁之丞様
御家来中様 御家来中様 御家来中様
(43)
大久保加賀守様 堀田鴻之丞様 阿部主計頭様
御家来中様 御家来中様 御家来中様
追而当所ニ御屋敷御留守居有之候御方〻様江致御通達候事ニ御座候、当時
御守衛ニ付各様御在京之御事ニ付、奥平大膳大夫 御守衛隊長之者ゟ
御通達為致可申之処、此節長刕江罷越留主中ニ付、従拙者致御通達
候、宜御承知可被下候、以上
別紙之通伝 奏衆被差越候ニ付、写壱通相達候間、被
得其意同席江茂可被相達候
九月朔日
一是迠諸藩士并浮浪人等諸家江立入暴論を唱候より、被脳
叡慮候次第之義有之候間、以来右様之義無之様取締被
仰出候事
一諸藩士堂上諸家江立入候義、以来各藩ニ而役〻人員相定、
名前伝 奏江差出置、其他之輩猥ニ立入有之間敷、被
仰出候事
右之通被 仰出候間、諸侯在京在府在国在邑共、
不洩様早〻可被相達候事
八月
「 御用廻状 」 上を折紙ニ而
以廻状致啓上候、然ハ当七月十三日町御奉行瀧川
(44)
播磨守様ゟ御呼出ニ付罷出候処、公事方与力熊倉市太夫
を以、別紙之通御書付并桃灯印・法被等印御書付御渡
有之、御同席様方江御通達可申旨御達有之候、当所ニ
御屋敷御留主居有之候御方〻様江ハ、其節致御通達候、
右無之御方〻様者於江府表御通達致候旨、然ルニ、
御守衛御在京之御家来中様御承知無之候而者如何ニ付、
大膳大夫御守衛隊長・伍長之者ゟ御通達為致候様、
江戸表ゟ申越候処、右之者共当時長刕表へ罷越留
主中ニ付、従拙者御書付写并雛形写を以致廻達候、
早〻御順達、御留より拙者方江御返却可被下候、以上
奥平大膳大夫留守居
九月朔日 富士野彦右衛門
真田信濃守様 附札今四ツ時半過堀田様衆ゟ至来ニ付、
御家来中様 早刻栁原様衆江順達致候
栁原式部大輔様
御家来中様
酒井繁之丞様 附札今三日五ツ半時大久保様衆ゟ至来、即刻
御家来中様 阿部様衆江御順達致候
大保レ久加賀守様 附札昨二日差附至来之処、留主中故、今三日
御家来中様 酒井様衆江御順達致候
堀田鴻之丞様 附札昨三日阿部様衆ゟ至来之処、当番留主中ニ付、
御家来中様 今四日真田様衆江御順達申候
阿部主計頭様 附札今三日酒井様衆ゟ至来、
御家来中様 堀田様江致御順達候
一内侍所非常之節相用候桃燈・法被雛形
(45)
侍分
紅松皮之胴輪白菊 （図）
御紋上ニ黒古文字之内印
仲番
上下黒松皮中白菊 （図）
御紋上ニ白古文字之内印
下部
上下黒松皮中白菊
御紋上ニ白古文字之内印 （図）
但、御有来菊御紋付後之下ニ
朱之内字之印有之候馬桃
灯取交相用候
下部
法被
花色地 （図）
背ニ白古文守（字）之内印
下白松皮
右者非常之節平日共相用候
(46)
内侍所非常之節相用候桃灯・法被等仕度、別紙雛形
之通相定候ニ付、夫〻可達旨其筋より申出候間、被得其
意同席中江も可被相達候
七月
右弐通、堀田様衆ゟ今四ツ半時過至来ニ付、八ツ時栁原様衆江
順達致候 九月四日
一奥平様衆ゟ廻状左之通
「 御用廻状 」 上を折紙ニ而
以廻状致啓上候、然者今四日御所司代稲葉長門守様ゟ御呼出ニ付
罷出候処、公用人を以別紙之通御書付弐通并御別紙壱通
御渡有之、御同席様方并在京御家来中江も御通達可申旨
御達有之候、則写渡廻達候、早〻御順達、御留より拙者方江御返
却可被下候、以上
奥平大膳大夫留主居
九月四日 富士野彦右衛門
真田信濃守様 栁原式部大輔様 酒井繁之丞様
御家来中様 御家来中様 御家来中様
大久保加賀守様 堀田鴻之丞様 阿部主計頭様
同断末略
追而親兵隊長之者より御通達可申之処、過日得貴意候次第ニ付、拙者ゟ
致廻達候、御承知可被下候、以上
一別紙左之通
(47)
別紙之通伝 奏衆被差越候ニ付、写弐通相達候間、被得其意
同席江茂可被相達候 九月四日
猶以松平甲斐守江者松平肥後守ゟ相達置候、以上
元中山侍従去五月出奔、官位共返上、祖父以下義絶、当時
庶人之身分候処、和州五條之一揆中山中将或ハ中山侍従与
名乗無謀之所業有之候得共、 勅諚之旨相唱候故
斟酌致候者も有之哉ニ相聞候、当時称官名候者全偽名、
且不憚 朝権唱 勅諚候段、国家之乱賊ニ而、
朝廷より被 仰付候者ニ者一切無之候間、早〻打取鎮静可
有之、討手之面〻江不洩様可相達事 九月
元三條西中納言 元三条中納言 元東久世少将
元壬生修理権大夫 元四条侍従 元錦小路右馬頭
元澤主水正
右七人、去ル十八日以後同伴及他国候段、不憚 朝威甚如何
ニ被 思食、被止官位候、和州五条一揆之中山之如く何方江
手寄偽名を唱諸人を恐（誑の誤カ）惑致し候茂難斗候、何方江罷越
偽名を唱候共、聊無斟酌捕押可有之 御沙汰候事
且（但）、若乱暴ヶ間敷有之候者、臨機之所置召捕可有之候
九月
右者奥平大膳大夫様衆ゟ暮六ツ時至来
(48)
九月四日
九月七日
一奥平大膳大夫様御留主居衆ゟ廻状左之通
以廻状致啓上候、然者只今御所司代稲葉長門守様ゟ御呼出ニ付、罷出候処、
公用人を以御書付弐通御渡有之、御同席様方江御通達可申旨、且在京
之御家来中江も御達可申様被申聞候ニ付、則御書付写弐通致廻達候、
早〻御順達、御留より拙者方江御返却可被下候、以上
九月六日亥刻 奥平大膳大夫留主居
富士野彦右衛門
真田信濃守様 榊原式部大輔様 酒井繁之丞様
御家来中様末略
大久保加賀守様 堀田鴻之丞様 阿部主計頭様
別紙之通親藩一列江相達候様、松平肥後守江伝 奏衆ゟ被差
越候書付写壱通相達候、被得其意同席江早々可被相達候
九月
為御守衛諸藩応石高強幹忠勇選士貢献之義
御沙汰ニ付、先頃以来追〻貢献深 御満足 思召候、然処
当節富国強兵・武備充実専要之折柄、各藩選士貢献
候而者、自然費用相嵩疲弊之一端ニ茂相成候而者
御不本意 思召候間、御残念ニ者 思召候得共、各被
差返候旨被 仰出候事
但、人数屋敷ニ差置、非常 御警衛可有之、尤御守衛
名目ニ者無之事
(49)
御用廻状
以廻状致啓上候、然者昨五日夜御所司代稲葉長門守様
より御呼出ニ付罷出候処、公用人を以御書付御渡有之、御
同席様方御家来中江茂御通達可申旨御達有之候、
則写弐通致廻達候、早〻御順達、御留ゟ拙者方へ御返
却可被下候、以上
九月 奥平大膳大夫留主居
富士野彦右衛門
宛名前同断略ス
別紙之通親藩一列江通達致候様、伝 奏衆被差越候付、
写壱通相達候間、被得其意同席江早〻可被相達候、以上
九月
攘夷別 勅使 太宰帥熾仁親王
右之通七日五ツ時堀田様衆ゟ至来ニ付、早刻酒井様衆へ致廻達候、
一右ニ付、御守衛御用所江為伺隊長罷越候処、前条御守衛被差
返候と申御書付、同文之御書付壱通御渡、畑肥○後〈前〉守口上ニて左之通
今日迄従 禁中御渡ニ相成候寺院者明日中ニ御引払、私御屋敷江
御引取可被成候、若無拠義御座候而御延引相成候ハヽ、何日迄
御延引御願と申儀書取、御申立之事
追而町宅被致候方ハ、右之町処御認御差出可被成事、
以来御勤向之儀者追而御達し申入候間、左御承知可被成候事
(50)
右岡本弾正殿ゟ被仰渡候旨、是又肥前守申通候
一右ニ付、早速引払可申之処、御屋敷も無之、寺院或町屋借請ニ付、
五七日之間御日延致候所、御聞済無之、十日迄ニ引払候様有之、
一九月八日昼後六角堂前海老屋定八方江引越
一江戸飛脚屋ゟ為知申立左之通
河内守殿御渡書附 不遠内 御上洛可被遊旨□思召候、御
頃合之義者
酒井雅楽頭様 右姫路様ハ将軍様御目代之よし御座候
松平下総守様 右晦日御領分忍ゟ仲仙道御登り御座候
戸沢上総之助様 阿部播磨守様 右四頭急ニ御上京御座候
小田原様・二本松様御見合之よしニ御座候
江戸出火
九月四日夜丑刻ゟ馬喰町一丁目ゟ出火、折節西風ニ而同二丁目南側
不残、小伝馬丁三丁目南側不残、通油丁北側不残、通塩丁・同横山
丁一、二丁目不残、久松丁・たちひ丁一、二、三丁目、村枩丁・同明丁不
残、それゟ矢の倉大川端津かる様不残焼、未火鎮不申候
九月八日 烏丸通姉小路上ル
和泉屋甚三郎
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（遊紙）
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（遊紙）
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（裏表紙）