Group Description:本作は似顔と紋から〈9〉羽左衛門と〈3〉広次と考えられる。
また二本足の壷印が付されていることから春章の活動期でも初期にあたる、明和期の作品であると推定できる。二人は明和2~9年度まで市村座で同座している。
羽左衛門が丑の刻参りの扮装をしていることを頼りにこの時期の番付と歌舞伎年表を確認すると、明和7.7市村でこれを演じていることが確認出来る。この時羽左衛門は相馬先生将のりを、広次は浮島大八を演じており、相馬先生が恋が叶わぬゆえ丑の刻参りをするところを大八が諫めるも聞き入れられず、さらに社に納められた巻物を引き裂こうとしたため是非なく殺すという筋だったらしい。丑の刻参りの扮装や口に咥えた巻物など、内容に合致しており、書き入れとも一致することからこの明和7.7市村のものと考証する。