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4. 演劇と春本

長枕褥合戦

人形浄瑠璃の江戸作者の嚆矢としても位置づけられる平賀源内には、その代表作「神霊矢口渡」(明和7年(1770)の三年前に、この作品を上梓していた。いわゆるオドケ浄瑠璃、破礼浄瑠璃(ふざけた下ネタ風)であるが、人形浄瑠璃を愛好していた源内ならではの作品で、節付も施されている本格的な体裁である。この段階で、二世吉田冠子らの協力がすでにあった可能性もあるが、江戸浄瑠璃作者として華々しくデビューするきっかけとなった作であることは間違いない。
本書は、片々たる「戯れ本」ではあるが、複数度にわたる版行が知られている。

No.07Aは、明和4(1767)年刊の初版で、半丁6行の江戸の義太夫正本の本格的な体裁を持っている。渋井清旧蔵本であり、今回初めて公開される。

No.07Bは、07Aを再刻したもので、初版の後序を序文に代え、朱摺にしている。本文の字配りはほぼ初版に一致するが、ところどころ異動があり、なかんずく再刻時に用いた原本には、1丁分の欠丁があったらしく、その文章は、いわばねつ造されたものである。題簽には「作者 垂本平賀太夫 画工 太澤程由斎」とみえるが、画は存在しない。

No.07Cは、07Bに、歌川国虎画『恋相撲四十八手』(文政7(1824)年)の挿絵、歌川国貞画『恋相撲続十二手』(文政8(1825)年頃)の見返し・序・目録・挿絵、歌川国安画『花勝美色の結綿』(天保3(1832)年)の挿絵の一部を加えて絵入本としたもの。

No.07Dは、安永年間(1772〜1780)に小本の体裁に変更して刊行された「安永小本」を、万延元年(1860)に骨董屋で銀鶏が見つけて再刻したもの。人気があったらしく、この銀鶏本の系統にも3種類の異本が認められる。

長枕褥合戦(ながまくらしとねがっせん)/志道軒高弟悟道軒 作
所蔵番号: arcBKE2-0010
07A
長枕褥合戦
ながまくらしとねがっせん
志道軒高弟悟道軒 作
半紙本1冊
明和4(1767)年刊
立命館大学ARC
長枕褥合戦(ながまくらしとねがっせん)/志道軒高弟悟道軒 作
所蔵番号: arcBKE2-0011
07B
長枕褥合戦
ながまくらしとねがっせん
志道軒高弟悟道軒 作
半紙本1冊
文政後半〜天保前半(1825〜1835)頃刊
立命館大学ARC
長枕褥合戦(ながまくらしとねがっせん)/志道軒高弟悟道軒 作、二世烏亭焉馬(猿猴坊月成) 作、歌川国貞 画、歌川国虎 画、歌川国安 画
所蔵番号: Ebi0792
07C
長枕褥合戦
ながまくらしとねがっせん
志道軒高弟悟道軒 作、二世烏亭焉馬(猿猴坊月成) 作、歌川国貞 画、歌川国虎 画、歌川国安 画
半紙本3冊
天保(1830〜1844)頃刊
個人蔵
長枕褥合戦(ながまくらしとねがっせん)/志道軒高弟悟道軒 作
所蔵番号: hayBKE4-0001
07D
長枕褥合戦
ながまくらしとねがっせん
志道軒高弟悟道軒 作
小本1冊
万延元(1860)年刊
立命館大学ARC林コレクション